「建築知識」という本は建築士さんのバイブル的な本であり、建物を設計するにあたり必要な情報を提供するというものです。
建物の最終工程である塗装も建築士さんの知りたい情報であり、その特集もこれまで何回か出版されており 、私もその読者の1人でした。私が初めて買ったのは1993年11月号の『特集[木材+塗装]ノウハウ図鑑』というもの で、このタイトルどおり多くのノウハウを得ることが出来ました。この時の私の塗装職人歴はまだ4年だったのですが 、それまで図書館に行っても、専門書店に行っても無かった内容のものでした。その後も何回か塗装の特集があり私 のライブラリーの一部となったのです。特に最初に購入した『特集[木材+塗装]ノウハウ図鑑』は何度も読み返して、もうよれよれです。
今回執筆依頼をして頂いたキッカケは横浜の塗装店曽根塗装店の社長、曽根匡史さんのご紹介がキッカケで、編集者の大島さんが私のHPを見て『あのお宅は今!』の写真等を見せてもらったりお話をお聞きしたいということでお会いしてお話をしたことから始まりました。大島さんがいらした時に‘建築知識の大島です’建築知識とはこういう本ですと見せて頂いたのですが、私は既に何年かに渡り、建築知識の読者であり、私のバイブルだったので紹介に持って来て頂いたサンプルの本『最新!集団規定[難解条文]攻略ガイド』は必要無かったのです。出来れば私の持っていない1998年12月号『すぐに使える[塗装材料]活用シート』が欲しかった(笑い)その後、塗装についていろいろお話をしているうちに私に、塗装について執筆してもらいたいのですがと言われ私のバイブルである本に執筆するなんて、もったいない話です。というと、今までは建築知識が天野さんのバイブルだったかもしれませんが、何時の間にか天野さんがバイブルになっているのですよ。等と誉め殺しをされ、この後大変な事になることも知らずに、木登り豚『豚もおだてりゃ木に登る』になってしまうのでした。(笑い) |
(大島さん)
天野さんとの出会いは本当に衝撃的☆でした。今回の特集のキーとなっていたのは「現場の声をなんとか誌面に反映したい!」ということ。日頃から現場に立つ方にしか分からない、塗料・塗装の専門知識が知りたかったのです。そして、それを誌面に反映させたかった!
塗料の耐汚染性は、まさに現場を見れば分かるだろうという素人考えで、そんなことをやっている現場の方はいないかしら・・・。いるわけないかぁ…。と諦めかけていたころ、曽根塗装店の曽根匡史さんに天野塗装さんをご紹介いただきました。そして、天野塗装さんのHP『あのお宅は今!』の雰囲気を保ちつつ、読者の方々の知りたいツボをなんとか雑誌で分かりやすく解説できたらと思ったのでした。
素人の私に執筆なんて出来るかなぁと不安でしたが、まあ、7月20日発売ということだから先の話しだし、コラム程度のものだろうからと高を括(くく)っていたのが間違いでした。4月22日に来たメールの添付資料にあった執筆依頼書には
■現場調査の結果[戸建住宅編] (4頁 6,000〜7,000文字)
◇戸建住宅特有の汚れの傾向について
◇部位による汚れの傾向をみる
とあり、ドヒャー(冷や汗)そこで、間髪入れず問い合わせたところ、逆にもう1つお願いしたいのですよ。と言われ、え〜〜〜まだあるの〜〜〜。もっと少なくして欲しいと交渉するつもりが追加の依頼を受けることになってしまい、またまたドヒャー(冷や汗)です。その追加の執筆依頼書には
■塗料完全ガイド (13頁 約32,500字)
とあり、合計すると約4万文字・・・・。原稿用紙にして100枚、そして締め切りはと言えば
【締切:2002年5月24日】(執筆期間約1カ月)
とあり、1ヶ月無いではないですか。トホホ。まあ、救いは編集者の大島さんが天野さのHPに書いてあるように自由に書いてくださいと言われたことでしたが、約4万文字という数字にクラクラして来たというのがホンネです。でも、私のHPは4万文字以上あり、なんとかなるかなと言う甘い気持ちがあったことと、自分自身の火事場の馬鹿力に期待するしかないなと言う他力本願だか、自力本願だか、わからないような、チョット変なモチベーションでしたが、それを持ち合わせていましたので了解いたしました。
(大島さん)
実は! 実は! 実は! 天野さんを訪問したのは、「あのお宅は今!」以外にも目的があったのです(笑)。(しかし、今となっては言い訳になりますが(笑)、本当にこんな分量になるとは思わなかったのです)そのころ、私は、どんな雑誌や書籍でも平坦な構成になりがちな「樹脂別塗料解説」部分の執筆者を探しておりました。ただ、アカデミックな樹脂別塗料の解説は、読者も、編集側も飽き飽きだったのです。「最近はどんなお仕事をされているのか」、「どんなことが問題であるとお考えになっているのか」、「現場に対する思い」などさまざまな質問をさせていただき、いろいろなお話を伺っておりました。初対面から3時間程度でしたが、その一連のお話を通して、まさに「ビビビッ」(笑)。どうしても天野さんにご執筆いただきたいと心から思ったのでした!
(天野)
喋り出すと止まらない癖を直さなくては・・・・。
今回の依頼には取材が必要なものもあり、日曜日に取材に行く予定を入れなければならないのですが、通常の業務である現場調査・見積作成・勿論現場での作業もあり、かなりハードなスケジュールとなることは必至でしたが、塗装について原稿を書くと言う事は私にとって、とても楽しい作業でした。
『現場調査の結果[戸建住宅編]』は取材がいるため、先ずは『塗料完全ガイド』から始めることにしました。ところが普段使いなれているものはよいのですが、中には最近あまり使わないものや、敬遠しているものもあり、情報集めをしなければならないので書籍・インターネット・友達など多くの方たちのご協力を得て書き上げました。しかしこれをやることにより、知らなかったことや改めて気付いたことなどもあり大変勉強になったのは間違いありません。 以下は『塗料完全ガイド』の項目です。
塗材編
1)薄付け仕上げ塗材 | 2)厚付け仕上げ塗材 | 3)複層仕上げ塗材 | 4)装飾用塗材 |
セメントリシン アクリルリシン アクリルスキン じゅらく 溶剤リシン 弾性リシン 多機能型単層弾性仕上塗材 |
セメントスタッコ シリカスタッコ アクリルスタッコ 弾性アクリルスタッコ |
セメント吹き付けタイル シリカタイル アクリルタイル エポキシタイルRE エポキシタイルRS 弾性タイル |
石材調仕上塗材 陶磁器調仕上塗材 意匠性仕上塗材 |
塗料編
1)アクリル樹脂塗料 | 2)アクリルシリコン樹脂塗料 | 3)エポキシ樹脂塗料 |
水性反応硬化形アクリル樹脂塗料
ターペン可溶 強溶剤アクリル樹脂塗料 |
水性反応硬化型アクリルシリコン樹脂塗料 1液型ターペン可溶アクリルシリコン樹脂塗料 2液型ターペン可溶アクリルシリコン樹脂塗料 2液型強溶剤アクリルシリコン樹脂塗料 |
1液カチオン形水性エポキシ樹脂シーラー 2液型水性エポキシ樹脂シーラー 1液エポキシ樹脂シーラー 2液型液型エポキシ樹脂シーラー 1液型ターペン可溶エポキシ樹脂錆び止め 2液型ターペン可溶エポキシ樹脂錆び止め 1液型エポキシ樹脂錆び止め 2液型エポキシ樹脂錆び止め 2液型エポキシ樹脂エナメル 2液型タールエポキシ樹脂塗料 |
4)塩化ビニル樹脂塗料 | 5)合成樹脂エマルションペイント | 6)合成樹脂調合ペイント |
7)フタル酸樹脂塗料 | 8)フッ素樹脂塗料 | 9)ポリウレタン樹脂塗料 |
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水性反応硬化形フッ素樹脂塗料 ターペン可溶フッ素樹脂塗料 強溶剤フッ素樹脂塗料 |
水性反応硬化形フッ素樹脂塗料 ターペン可溶フッ素樹脂塗料 強溶剤フッ素樹脂塗料 水性反応硬化型アクリルウレタン樹脂塗料 1液型ターペン可溶アクリルウレタン樹脂塗料 2液型ターペン可溶アクリルウレタン樹脂塗料 2液型強溶剤アクリルウレタン樹脂塗料 |
以上の項目すべてに対してコメント等を書きました。
そして次は『現場調査の結果[戸建住宅編]』です。こちらは左の写真のような、外壁の汚染原因検証などを書いたのですが、比較的私の得意分野であるため、スラスラと書き上げることができました。その結果、予定より14日早い10日に提出することができたのですが、これからが、編集者の大島さんの大仕事なのです。素人の私が書いた大量の文章を編集するというのは大変だったと思います。なんたって当店では家族全員が職人のため塗装用語や塗料などのことは当たり前に喋っているので読者の方たちには書いてある説明が端的すぎて不親切らしいのです。ここで始めて、私はわかっていても読者の皆さんにはわかりずらいのだと気付いたのです。大島さんには翻訳の仕事までさせてしまって申し訳なく思っております。m(__)m
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6月も終わりになると編集作業も佳境に入ってきているようで、初版と言われるものが送られてきました。いよいよ本の形に近づいてくると、『ここはどうしましょう。 こうしてください。』などのやりとりも深夜になってきて、一体大島さんは何時寝るのだろうか、(私も起きてはいるのだが。)と思うくらいでした。私の書いたものの他にも多くの方々の原稿の編集をしているのだから、そりゃあ私が想像するだけでも大変ですよ。編集後記に愚痴ってストレス発散でもしてね。
(大島さん)
6月末、自分が思い描いていた特集ができるかどうか、一番の正念場でした。まさに、頑張りどころ。ここで頑張らないと、今までの積み上げが台無しになってしまいます。今回の特集では20名強有能な方々にご執筆いただいたので、その方々のご意見を最大限に尊重していいものをつくりたいと思っておりました。
「現場があるので晴れの日はなるべく天野さんに電話をしない」と決めていたのですが、日にちが押してくるにつれて、電話カケマクリ(笑)。ものすごい焦燥感と充実感となんともいえない感覚の日々でした。「この塗料について、もっと素人に分かりやすく解説するには、これと、これと、この要素が必要です。今すぐ書いてください!」(←きっと、こんな感じできつい口調だったと思います。ごめんなさい…。)
(天野)
イエイエ大島さんの良いものを作りたいという気持ちは十分に私には伝わっていましたので、敏腕編集者に乗せられたと言う感じですかね。今となってはもう遅いのですが、何度も読み返してみるとここはチョット表現が違うかな、とか、話しの繋がりが変だぞ、などたくさんありますが、致し方ありません。恥ずかしいと思ったら自分のHPなどできませんし、ましてや出版物の原稿など書けません。ここは、腹を括[くく]って後は発売日を待つしかないな、という気持ちです。と、ここまで書いたのですが、大島さんはギリギリまで私の原稿の翻訳をしてくださっており(苦笑い)感謝の気持ちでいっぱいです。そして私にストレス無く塗装に対する思いを書かせてくれたのであろうと思われる、編集長にも敬意を表します。
(大島さん)
こうして、2002年8月号月刊建築知識は無事にできました。自分が思い描いていた完全なものになったかは・・・・・ですが、より近いかたちにはなったかなとは思います。執筆者の方々にもご満足いただけたかなあと考えております。そうなれば、読者も大満足!バカウレ間違いなしですね(笑)!
(天野)
”バカウレ間違いなし” そりゃそうですよ。なんたって私、10冊も買ってしまいましたから。(大笑い)
最後に今回の執筆で何に驚いたと言って、インターネットの便利さに改めて驚かされました。なんと言っても東京と私の住んでいる愛知県半田市とで電子メールを使い瞬時にデーター(写真なども含む)のやり取りなどが出来、一瞬にして用件が済んでしまうのです。今まで当たり前の様にホームページを作りメールのやり取りなどをしてきましたが、仕事と言う部分でこんなにも役にたつものなのかと再認識しました。昨今の出会いサイトなどから起きる嫌な事件もありますが、インターネットで知り合った友達の曽根さんから私のバイブルであった建築知識の編集者である大島さんとも出会い、20頁にも及ぶ執筆をさせて頂き、大変光栄に思っております。多分、この本を受けとった時、私は涙する程感激することでしょう。実は私、2000年から自己開発プログラムを始めており、購入した次の日(2000年8月4日)に『私の欲しいと思ったことのあるすべてのもの』と言う項目に『塗装の本を書きたい』と書いており、遅まきながら、目標達成です。2002年7月20日は建築知識の発売日であると共に私の記念すべき目標達成日でもあるのです。ご協力頂いた方々には心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
建築知識のご紹介 ●月刊「建築知識」は、2002年で創刊44年目を迎えました。いまでは、約5万人近くの読者に支えられており、その9割近くは1級建築士等の建築専門家です。材料・設備・住宅・構造・法律・積算・PC利用技術・・・etc、建築の各分野でのテーマを毎月特集形式でまとめ、読者の仕事をサポートしていくメディアとして、信頼される情報を提供しています。 |
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