天野塗装
社説

■ ビジネス系 ■

 

『モーやん』に学ぶビジネス論

 『どてらい男』は昭和46年から4年半フジテレビ系列で放送されたテレビドラマで、花登筐の代表作ですが、その内容は、西郷輝彦 扮する主人公の「モーやん」が、『山善(機械商社)の創業会長をモデル』に小学校を卒業した後、丁稚奉公にいった先の番頭などにいじめられながらも不屈の闘志とアイデア商法で成功すると言うど根性ものである。

 このドラマのタイトルである「どてらい」は作者の造語で、てれもきらいもなく猪突猛進するイメージだそうです。

 このころ私は小学校2年生〜6年生であったが、今でも商売人と聞くとそのイメージはこのモーやんのことを思い出す。(注:モー娘とは全く関係ございません。)それくらい強烈なインパクトがあったのだが、今のこの不景気にはこの『よーしやったるでー!』と言う勢いが必要だと思うのです。このモーやんは前向きで、困難にも粘りとアイデアで乗り越えるパワーがあったのですが、このモーやんに影響されたのは私だけではなく同級生にもいたんですよねー。

 それは私がまだ中2のころでしたが、そいつの行動にはほんと、感心しました。それは先生が明日は読書感想文を書いてもらうので原稿用紙を持ってくるようにと言ったことから始まったのですが、そいつは明日、必ず原稿用紙を忘れてくるやつがいることを想定して、家から原稿用紙のパックを持ってきたのです。(そいつの家は文房具屋でした。)そして忘れてきた同級生につけで売ると言うなんとも商魂たくましいやつでした。このビジネスに問題は1つも無いのです。困っている人間にタイミングよく売るお助けマンと言う感じでした。

 実は私はこれが商売だと思うのですよね。私は職人ですが、経営者でもありますので、営業をするときはこの精神を大切にしたいと思っているのです。キーワードは場所とタイミングそして粘りとアイデアです。


平米単価の謎

 平米単価は1平米塗るのに必要な材料費と塗装工賃から出来ているものですが、一般的な住宅の外壁の算出方法としては便利なものです。しかしこの平米単価での算出方法はその平米数が150平米以下とそれ以上では多少作業スピードも違ってきますし、塗料の種類(高価なもの、安価なもの)薄め方(水やシンナー等で)塗り方しだいで塗料の必要量も違います。ましてや、1回塗りと2回塗りでは塗装工賃・材料費共にかなりの差が出てきます。

 例えば塗料を限界まで薄めて塗り易くし、1回塗りで済ませたら塗りやすいですし、早く塗れますので業者の作業性としては良いことだらけです。1回で済ませないにしても2回目を簡単に済ませば結構早く済みますし、材料も少なく済みます。けれどもお客様が見るとどの様に塗ったのかは判断するのが難しいのです。多分お客様は2回目を簡単に済ませても所々1回塗りだったとしても綺麗になったと気分爽快になると思うのですが、その差は3年4年と経って来る内にはっきりと出てくるのです。ですからこの平米単価の算出方法と言うのはその業者が普段行っている仕事の質を値段に換算する容易な方法であり、どこの業者も同じ基準と言う事は有り得ないですし、ましてやその業者が利益をどのくらいに考えているのかにもよりますので、単なる平米単価での比較と言うのは全くあてにならないと言う事になります。

 だったらどうしたら良いのかと言う事になるのですが、同じ建築業者である大工さんや左官屋さんは何人で何日かかり、材料は幾らかと言う方法をとっています。このことから塗替えなどでも、何人で何日掛かるのか聞いてみたり、目安としてホームセンターや塗料店で塗料を買ってきてご自分で犬小屋でも塗ってみては如何でしょうか。そうすると塗装の値段と言う物が少しずつ分かってくるかもしれません。(この場合勿論塗料の説明書どおりに下地処理をして下塗りを塗り、上塗りを2回塗ると言う様に塗る事が前提です。)その結果おわかり頂けると思いますが、塗装と言うものはその殆どが手間(塗装費)なのです。


あなたならどうする?

 最近塗料メーカー・営業専門塗装業者等が、下塗りに微弾性フィラー(各メーカー・営業専門塗装業者等が○○ポリマー等色々な名前を付けて万能下塗り材として売られております)を下塗りにして各種ウレタン樹脂塗料やシリコン樹脂塗料を上塗りとしたシステム塗装を売りとしておりますが、全ての条件に対して問題が無い訳では無くむやみに使用することによるトラブルも出ているようです。

 元来塗装と言う物は塗ろうとする素材にあった塗料・下地処理・塗装方法を吟味して行うものです。言われたなりの塗料をただ、ローラーで転がして塗るだけでしたら誰にでも出来ます。問題はその塗料が本当にその被塗物にあっているのかと言うことをその業者(営業マン等も含め)が知っているか、メーカーのカタログに対して自分なりのコメントが出きるかと言うことまでも要求されます。そのくらい塗料の選択と言うものは重要なことなのです。ですから、良く聞く話で、うちの会社ではこんなに良い塗料と塗装システムで塗装しますので20年は保証しますなどと言うことは私に言わせてもらうならば全く明後日の提案だったりもするのです。良いシステムかもしれませんが、(それが例え最高級の塗料と言われるフッ素樹脂塗料でも)その素材に合っていなければ豚に真珠と言う事にもなりかねないのです。

 塗料の選択は塗装をしようと思い立った時に最初に行う大事な作業です。ここで選択を間違えたら幾ら努力をしても全くの無駄ということになります。塗料は魔法の液体では無いのです。塗装をする腕も勿論大切ですが、塗料・塗装そして塗装をする素材についての見識も塗装業者には必須条件となります。


見積の盲点

 見積と言うのは文字通り見て積もるとなり、大体の概算と言う意味あいが大きいと思うのですが、これが合い見積とか見積合わせとなると基準と言うものが必要となります。

 この場合、A社とB社が同じ土俵に立ってこそ見比べることができるため、その仕様についての知識も必要となりますし、どの程度やるのかと言う事も知りたい事の1つです。塗装ばかりではなく、新築でも本のような図面を書き詳細な指示のあるものと立面図と平面図があるだけのものではその内容は全く違うものである場合も考えられます。

 しかし実際には、建築もしくは、塗装に素人であるお客様が選ぶ場合は、フィーリングで選ぶと言う事になるのではないかと思うのです。実際には塗装と言うものに対してどのような要求をするのか、何を重要視しているのかをお客様も明確にしておかないと、非常に困難と言う事になります。例えば『3年位持てば良いので安くすませたい』とか『10年後には塗りかえるつもりだが、それまでは出きるだけ綺麗に保ちたい』とか『汚れても仕方が無いが傷まないで欲しい』などです。

 綺麗で、長持ちして、しかも安くと言うのはお客様の心理ではあるのですが、それにも限界はありますし、その基準も曖昧です。それを解り易く説明し、それに伴う値段はこれこれでとかご説明することは、文章であれ、言葉であれ、非常に労力を必要とするものです。このことに対して少しでもご理解頂だき、やるやらないを問わず、見積書に対してのご感想やご返事を頂けたら幸いです。


塗り替え価格について・・・

 塗装というのは美観と保護という機能を持っているのですが、それは女性の化粧品やエステと同じような感覚だと思います。ですが、住宅を塗装すると言う意識と女性が化粧やエステをするという意識には物凄い差があるのにふと気がついたのです。

 大体人間の顔や頭を平米の単位にすると多くて0.1平米位ですが、女性が1ヶ月に使う化粧品代は一体幾らぐらいなんでしょう。1万円・・・それ以上それともそれ以下ですか?例えば少なくみて5千円としても、建築塗装の単位で、良く使われる平米数で計算すると、1ヶ月、1平米5万円です。この中には人件費は入っておらず、化粧品だけで、これだけの経費ということになりますそれで、もっても1日・・・その他にも美容院代とか・・・そう考えると塗料や塗装て、値段と性能からいけば、頑張っているんじゃないかな?

 化粧品やエステほどお金をかけてくださいとは言わないですが、ある程度お家にも気を配っていただくと塗装の価値や作業量というものがわかっていただけると思います(塗装についての知識をもってもらうこと、それが一番の節約にもなると思います。通常35坪位のお宅で屋根・壁等で、約300平米位です。)ということは住宅塗装て、メチャメチャ激安か、メチャメチャ手抜きということになりませんか?

 顔を洗わないで、化粧をするひとはいないでしょうし、下地クリームを塗らないでファンデーションを塗る人もいないと思います。化粧も塗装もその人やその壁などにあった塗装をするのがプロの仕事です。300平米を丁寧に水洗いすると職人2人で1日位はかかります。良く聞く話しで最も大切な下地処理をサービスすると言われる方が見えるようですが、『サービス=責任持てない』ということになり、心有る職人ならそのようなことは言えないのです・・・・・。塗装と言うものは塗料も大切ですが、施工する職人に大きく左右されます。魂のある塗装業者と巡り合うことをお祈り致します。


塗装の提案者

 新築の場合、塗装工事というのは仕上げ工事なのです。大抵工事の最終段階で、工期は無く、足場撤去に迫られ押せ押せとなることが多いのですが、塗装の良し悪しで仕上げが決まり、耐久性にも大きく左右するものです。しかし、現状は工期、コストは無いわりに仕上げ・耐久性の要求は厳しいと言う物です。

 本来は工期・コストともかなりの余裕を頂くことがクゥオリティの高い仕上げを得ることになると思うのです。塗装は良い仕上げを得るには本来、漆塗りと同じ様に乾いては塗り、乾いては塗りと言う工程をこなすものです。

 ペンキと言う物は物凄く薄いもので、1回塗りで、通常の塗料での塗布量は20〜30μ(アルミホイルは12〜15μ)位です。だから電子顕微鏡でみると細かい穴だらけなのです。それに均一に塗りつけるのも難しく厚く付いたところや薄く付いたところなどが出来るため、乾いては塗り、乾いては塗りという工程を増やすことが良い塗装に繋がるのです。そのためにはやはり時間とコストがかかることになるのですが、それをやらずにどうせ剥がれるのだからとか、長持ちしないからとか言うイメージをもたれているのではないかと思うのです。

 素材にあった塗料を選び、プロの塗装屋から見た汚れにくく長持ちする塗装の知識を身につけ塗料メーカーにもお客様にも常に良い塗装への提案者であり続けたいと思っています。


塗装と保証

 結論から言いますと当店では塗替えに関しては塗料・塗装に対しての何の保証になるのかわかりませんが、書面契約による保証はできません。なぜなら自分の使っている塗料の性能がデーターとしてはっきりまだ出ていないものも沢山ありますし、自分でもはっきり分からないものをむやみに保証するとは言えないのです。もし保証するのなら、5年・6年実際にデーターのある塗料で実績のある素材(塗った事のあるもの)になるのですが、まだまだ自分の納得いくレベルでは無いのです。それに自分の使っている塗料のこともすべて分かっている訳ではありませんし、RCの建物に高弾性復層塗材を塗装した場合、どの程度のクラックまで追従するのか、クラックに追従したとしても水蒸気による膨れは問題ないのか、と言う事になり一番安全な壁から漏水はしないと言う保証くらいになってしまうのではと思うからです。

 ベランダ等の防水にしても5年に一度のトップコートの塗替えをして頂かないと防水層が傷む可能性は充分にありますし、とにかく安全な保証基準になってしまい、蓋をあけるとつまらない保証になりかねないのです。当店はカタログ指定に近い施工をしているつもりですが、湿度・温度・24時間以内の降雨にあったりもして、全くのカタログ通りとも言えません。塗料と言うものは厳しい条件の中塗ったものを保護しております。

 光・水・空気の3要素が重なった時からなる物体の劣化(土の中に埋まっている杭は土の中よりも土から出ている境目が空気・水・光の3要素が重なるため一番痛む)は人間が存在する以上(これが無くては生きていけない)避けることは出来ないのです。

 私は現在塗装は消耗品なので保証書は出せないが何かあったらお電話くださいという説明をおこなっており、お客様からの同意も得ています。尚、アフターフォローの保証・ちゃんと3回塗ると言う保証・3年後にまた見にくるという類の保証は出来ます。保証書があると安心感はありますが、塗料を作っている訳では無いので保証は難しいのです。

 例えば歯医者さんに行ってこの歯は5年保証しますとか、心臓を手術して5年は保証しますと言う保証は出きないですよね。それを長持ちさせるためのアドバイスや定期検診等は当然できますが、それは塗装でも定期点検・メンテナンス・アドバイスをすることと同じです。半永久的・保証する等大変魅力的な言葉ですが、不老不死・10年若返る・永遠の美貌等と同じ様に心理的な営業トークに終わらないことを望みます。

(このコメントは塗装だけでは無く建物の外壁・コーキング等を含めたものです。外壁が傷んでも塗装がもっていれば良いと言うものではありませんので・・・。)

 

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