天野塗装
社説

■ 塗装と塗料系 ■

 

コンフォーマル性

 さまざまな形状に異質な表面層を重ねる方法には、塗装・メッキ・ビニールクロス・塩ビシートなど、いろいろあります。

 形状適応性という意味で、最もすぐれているのが塗料です。フィルムを貼りつける方法では、面の形状が複雑な場合にはどうしても「しわ」がよってしまいます。このような形状適応性をコンフォーマルと言います。ですからコンフォーマル性とは全ての塗料が持っている性質です。液体である塗料はコンフォーマル性を持っていますが、その液体として重要なのが、粘り気です。つまり、「粘度」ですね。粘度は塗料の成分の樹脂が多くの役割をはたしているのですが、その樹脂にも多くの種類があります。アクリル樹脂・ウレタン樹脂・シリコン樹脂・フッソ樹脂・ポリエルテル樹脂・エポキシ樹脂などです。その粘度を利用して、塗料のコンフォーマル性を発揮させるのですが、塗りやすくするため、あまりにもシンナーや水で薄めてしまうと流れ落ちてしまいます。粘度が高すぎると肌も悪く塗装するエネルギーも相当かかることになってしまうので、そのバランスを気温や2液型塗料ならば時間などを見計らいバランスをとる(2液型塗料は時間が経つと硬化していしまうので・・・)ということになります。液体である塗料のコンフォーマル性をいかんなく発揮させるには均一に塗るというローラーさばきや、刷毛さばき・スプレーガンさばきが要求されるのです。そのことを頭に浮かべながら塗装をしていると自然に良い仕上りになるはずですね。その時に始めて塗装の良さというものが理解されるのでは・・・

 そう言えば自動車の3次曲面は塗料や塗装のもっとも得意とする分野ですね。


プライマー

 プライマーというのを辞書で調べるとプライマリー「入門書。手引き書。」などと出ておりますように塗装では最初に塗るものと言う意味だと思います。鉄ならば錆び止めのことをさしますし、セメント系ならば吸込みを止めたり、密着を良くするための糊のような物をさします。「セメント系のプライマーのことをシーラーと呼ぶ物もありますが、これは吸込みを止める=シールするという意味から来ているのではないかと思います。」このプライマーが幾ら強力に密着する機能をもっていたとしても、表面が粉っぽかったり、その反対でツルツルしていては密着しませんので、洗浄をしたり、足付け(塗料の付きがよいようにペーパーで目荒しをすること)するのです。

 最近はカラーベスト・コロニアルなどを塗装するときに必ず洗浄をするようになってきましたので余り見掛なくなりましたが、1年位で剥げてくるのはこの洗浄をやってないからか、適当にやっているからです。これは塗ってしまえば後では見えない作業ですが、後でやり直しも出来ない作業なのです。あまりにもプライマーを過信するのは危険ですね。とにかく下地処理は徹底的にやらないと(限度はありますよ!もちろん)塗装する意味が無いのです。

 私は「シリコンやフッ素で塗装します。」と言うセールストークよりも「当店では徹底的に下地処理をします。」という方が信用できるのですが・・・下地処理の良し悪しはお客様が見てもはっきり解ると思いますよ。でもこれが結構てまひまかかるのです。ふき掃除とか洗濯も同じですよね。


ケレン

 ケレンというのは塗替えの時、鉄などの塗装をする前に錆びを落しり、錆びていなくても塗料の密着を良くするためにすること(これは正式には目粗しとか、足付けといいます。)なのですが、塗替えをする時に最も大切な工程の1つです。本来錆びというのは虫歯のようなもので、取り去らないと、いくら良い錆び止めを塗っても完全に止めることは難しいのです。錆びる前に塗装するというのが、一番お金もかからないですし、錆びないようにすることもできるのですが、多くの方は錆びてきたから塗装するということになると思います。その場合出きる限り、電動工具が使えればそれを使い、使えない場合はサンドペーパーやスクレパー・ワイヤブラシなどを使って錆びを落してから、錆びてない場合でも塗料の密着を良くするためにペーパーで擦ってから塗装します。この作業は塗装の中でも大変な作業となりますので、できれば錆びる前に塗装しましょう。


錆び

 錆びては何故いけないか錆びを何とか防ぎたいという、際限の無い努力を人はなぜ繰り返しているのだろうか?を改めて考えてみたいとおもいます。

 日常生活の貧しさは、色々の原因があるが、その中には社会全体の手入れの悪さがある。手入れは儲かる可能性が少ないと言う特徴があり、したがって今時人気の無い作業です。

 今の利益優先の日本ではこれは当然のことかもしれませんし、それに歯止めをかけ、物を大事に手入れして使おうとする人は変人と見なされるかもしれません。

 

錆び2

 使い捨てカイロは外袋に「鉄粉の酸化熱を利用した便利なカイロです。」とかいてあり、「原材料名:鉄粉・水・木粉・活性炭・食塩」とあります。外袋を破ると酸素と袋の中の内容物とがふれ適度な発熱が始まるのです。

 それがどう言う【反応】かと言えば鉄が錆びるとわずかながら発熱するということを利用したんですねーすばらしい!

 食塩が入っているのがこれまた泣かせるのです。(海の近くだと鉄はよく錆びますよね。)この原理は結局鉄が錆びないように塗装して空気を遮断するということを逆手にとったアイディアなのです。

 いったいどこのだれが思いついたのか・・・

 このカイロの原理を利用して通販などで売っている布団圧縮のプラスチックの袋の中にカイロを入れておくと酸化に必要なわずかな酸素をカイロが吸い取り真空状態になってダニが死ぬというアイディアもあるそうです。

 これを考えた人は錆びと上手く付き合ってますね。

 

錆び3

 一戸建ての家屋には壁材・屋根材としてカラートタンがありますが、亜鉛メッキした鉄板に、耐食性・耐久性・光沢・平滑性の良い塗料を焼き付け塗装したものなのですが、通常2回塗装し、2回焼きつけるというのが普通です。長尺のカラートタンは、重ね部分が少なく防錆上有利ですし、北国(特に北海道)の屋根では雪の滑りが良く殆どの屋根がカラートタンと聞いております。

 常温で塗装するよりは錆びに強いとは言うものの、錆びない訳ではありませんから、光沢が無くなったら塗りなおす時期と考えた方が良いでしょう。通常は6年〜8年後と思っていただければ良いかと思います。

 通常カラートタンは平板の状態で塗装され、その後リブ状(凸凹)に加工されるので、折り曲げた部分から錆びが出はじめます。塗り替えをする場合でも折れた部分(エッジ)は透けやすいので塗装するのに注意が必要となります。その塗り替えの塗料も今ではさまざまあり、昔のようにペンキ(合成樹脂調合ペイント)だけではなく、アクリルからフッ素までさまざまありますので、一概に常温塗装が劣るとは限りません。

 良い塗料を丁寧に塗装すれば隅々まで防錆塗装ができ、はさみなどで切った切り口(塗装されていない部分)もなく、(ここから良く錆びるのです)カラートタンと同じように6年〜8年は塗装の必要は無いと思います。

 

錆び4

 放置しておけば鉄は必ず錆びます。あまりに日常的なことで、人は無関心でありますが、少なくともその原因を考えることをしないでなんとなく納得しています。あまりにも当たり前なことなのでしょうね。

 「かみそりの一夜に金精(錆び)て五月雨」

 という句は、江戸中期の俳人の作ですが、湿った環境では、良く切れるかみそりでも包丁でも一夜にして錆びるということでしょうが、錆びに金精の字をあてているのは鉄の精が浮きでてくると思ったのでしょうか。平たく言えば身から出た錆びということでしょうか・・・

 たぶん日本人好みの「わび・さび」も錆びの色から来たことに疑いはないと思うのですがいかがでしょうか?


錆びとDIY

 錆びは虫歯のような物です。歯に関しては多少唾液で治癒能力はあるらしいのですが、鉄錆びに関してはそれは全くありません。できれば全て取り去るのがベストですが、建築塗装の場合完璧に取るというのは無理があるのです。

 橋梁などに使われている錆び止めは2液型エポキシ浸透型というのが良く使われております。エポキシと言う樹脂は接着剤にもあるように元々付着性が良く薬品にも強く、大変硬い塗膜を形成します。そのエポキシ樹脂を使った錆び止めは更に錆びに浸透させ固める機能と厚付け出来るというメリットを持っているのです。エポキシと言う樹脂は黄変すると言うデメリットはあるのですが、下塗り・中塗りに使用すればそれはあまり問題ではありません。エポキシ錆び止めは、高性能錆び止めですが、それはあくまでも錆び落しをすると言うことが前提ですので、決して良い錆び止めを使えば錆び落しは必要無いというものではないですので、お間違いなく。ですから、本当は錆びが発生する前に2液型エポキシ浸透錆び止めを塗装して、上塗りにウレタン樹脂塗料以上の物を塗装するのがベストです。この時、何回か回数を塗って厚塗りしておけば表面が劣化して、粉になってきても洗ったり、磨いたりすればまだまだ活膜(艶の有る塗装面)は残っています。ですが、磨くというのは結構大変な作業ですので、ある程度の年月がたったら再塗装するというのが一般的です。これはあくまでも上記のやり方をしたという仮定ですので、塗装面が薄かったり、合成樹脂調合ペイント(一般的にホームセンターで売られているもの)では当てはまらないと思います。ご自分で塗られるのなら塗りやすさや値段から言っても合成樹脂調合ペイントが無難だとは思いますが・・・

 ご注意していただきたいのは前の塗装の剥がれかかっているものは出来る限り取り去りその上に錆び止めにしろ、上塗りにしろ、いっぺんに沢山塗り付けようと思わず均一に塗って、乾いては塗り、乾いては塗りというやり方でやってください。自動車にWAXがけをする要領と同じです。それは何故かというと一気に厚く塗ろうとすると流れますしその流れた物は山になって見た目も悪いですが、問題はそこは付着性が悪く何年かすると、ポロッと剥がれてしまうのです。そのためにも刷毛さばきやローラーさばきというのが重要なのです。コーティングすると言うような意識で塗装してみてください。きっと上手く行くと思いますよ。自分で上手く塗装できると結構満足感が得られますよ。

3時の休憩に奥さんが「あなたーお茶!」なんて言ってくれたら幸せを絵に描いたような感じです。自分で書いていて少々恥ずかしくなって来ましたのでそれでは失礼します。


自然塗料

 自然塗料と一口に言っても種類は多いのです。私の知っている塗料でもオスモカラー/リボス/柿渋/アウロがあります。アウロと柿渋は天然成分100%で、リボス、オスモは石油精製品などを含有しています。

 私が良く使うオスモのメーカーの方は「当社は元々材木屋で環境や健康への影響を極力抑え、木になじむ塗料として成分を選んでいる」と言われます。ここで注意すべきなのは、塗料の信頼性の高さは全成分の公開だと思うのですが、自然素材でも臭いがあるものもありそれに敏感な方もみえると思います。いずれのものも、天然素材だから安全だと過信しすぎないようにご注意ください。尚、自然塗料に限りませんが、木部への塗装は数年ごとのメンテナンスが必要です。その事を充分ご理解頂いたうえでご検討頂きたいと思います。木の持つ本来の風合いを生かすのに最も適した自然塗料は今後使われることが多くなって行くと思います。そこで自然塗料とは、どういうものか、何故人気があるのかなどもう少し掘り下げて考えて見たいと思います。

自然塗料2

 健康意識/環境保護意識が高まっているなか、環境に優しいと言う事で、自然塗料は今後増えていく塗料の1つですが、自然塗料の多くは木材用塗料で、他の多くの木材保護塗料には防腐剤や防虫剤が含まれていますが、有毒である防腐剤や防虫剤は自然塗料には入れることが困難だと思うのです。と言う事は自然に優しい=少々の虫や腐りには我慢が必要と言う事になると思うのです。こう考えていくと自然塗料や自然素材も住宅全部がそうでなければいけないのでは無く、要所要所に使っていくのが良いのではないかと思います。この自然素材とは、反対に抗菌などの塗料や建材などもあります。私は「自然塗料と抗菌塗料」この2つを両立するのは難しいと思うのですよ。例えて言うと有機栽培で出来た野菜をスーパー等で売られているような野菜のようにワックスがかけられたようにピカピカで虫1つ食ってないものは出来ないと思うのです。

 「消毒された綺麗な野菜が良いか」「少々虫が食っていても無農薬野菜が良いか」の選択と同じ様に建材や塗料も選択して頂きたいと思います。只、流行っているからと言う理由だけでは長続きしませんので、正しい知識をもつ事が大切だと思います。


吹き付け塗装

 最近は吹き付け塗装というのは塗り替えではあまり見かけなくなりましたね。吹き付け塗装はビニール等でマスキングをして吹き付けるのですが、臭いなどもローラーで塗装するよりも霧状になるため強く臭い、塗料ミスト(風などに乗っ飛んで行く余分な塗料)があり、自動車などに付いてしまうなどのことがあります。塗料の損失もありますが、自動車につくと言う方がもっと問題なのですが、そのため塗り替え=ローラー塗装というのが最近では主流になっているようです。これは環境の面からすると当然のことだと思います。同じ強溶剤(ラッカーシンナーなどで薄めるタイプの塗料)塗料でもローラーで塗装すると臭いは半分以下に感じられます。

 環境の面から考えると水性塗料は使った後のローラーなどを水で洗わなければならないのでその洗い水での汚染などの心配があります、その点では溶剤タイプは廃棄物処理業者に持っていけば燃料としてリサイクルできるので有利かなとも感じます。以上の観点から環境問題は1つの視点からでは無く、あらゆる角度から最も良い方法を選択するということになります。

 ひとことで環境と言っても、工事をしている時のお客様への生活環境への考慮・社会全体から見た環境対策など今後は塗装業者としてどのように社会環境に適応していくかがポイントとなります。


防水

 塗料にはもともと撥水性というのがあります。ですから、塗装すれば防水すると言う事になるのですが、問題は塗る相手(モルタル・コンクリート・ALC・サイディングボード等)が動いたりしてひび割れなどが起きるので柔軟性というものが必要になるのです。例えばモルタルに髪の毛程度のひびが割れたときにそれに追従する塗料(弾性塗料)と言うものを塗装します。その弾性塗料もある程度の厚みが必要です。薄いゴムを引っ張れば直ぐに切れてしまうのと同じで厚みがないとその効果はありません。そう言う要望に答えて単層弾性塗材というものが出てきたのですが、壁をゴム状のもので覆ってしまうと今度は湿気の出入りが出来なくなり中に入った水分が出にくくなり、水は止めるが、湿気は出すという機能を持ったもので多機能型単層弾性塗材と言うのもが出てきて数年が経ちます。ですが、鉄筋コンクリートの建物場合屋上防水がどこかしら切れていて雨がもおるほどではないにしろ、コンクリートの内部に水分が入っている場合には多機能型単層弾性塗材からは抜けきれず水ぶくれのようにところどころ膨らんでくることがあります。

 この場合はまず、壁を塗装する前に屋上防水を施工してからすでに何年が経つのか?例えばそれが10年以上経っているのならば壁よりも先に屋上防水をやり直す必要があります。防水にも色々な種類が有り、ウレタン塗膜防水・FRP防水・シート防水・アスファルトルーフィング防水等色々あります。これらの種類はどれが一番良いというものではなく、その建物の状況や今後のメンテナンスに応じて選択するようにした方が良いと思います。塗装や防水も必要なところに必要な塗料や工法を選び適切な施工をすることが、必要です。なぜならば例えばウレタン塗膜防水のようなゴム状の防水の上にはFRPのような硬質な防水は不向きです。幾らFRPがボートの製作材料と同じでも下地が柔らかく、動いてしまってはバリバリ割れてしまうのは想像できると思います。(防水の場合素地に密着させているので・・・)その場合はウレタン塗膜防水を全て剥がしてしまうか、または、ある程度いたんだ所を剥がして再度ウレタン塗膜防水をする(全て剥がしてしまえば、その建物に合っていればFRPでも問題ありません。)と言う方が、懸命だと思います。全ての材料や塗装方法がそうですが、適材適所です。

 

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